「障害者」という言葉はよく聞くけれども、法令上でどのように定義されているのかは知らないという方は多いのではないでしょうか。
「定義」という言葉を聞くと、何か冷たい感じがするかもしれませんが、行政サービスを受けたりする上で、どのような方が対象になるのかをはっきりさせるために法令で定義する必要があります。
それでは、法令で定められている「障害者」の定義をわかりやすくご説明したいと思います。
「障害者」とは
このサイトは障害者グループホームに関するサイトですので、障害福祉サービスに関する法令を中心にご説明したいと思います。
障害者総合支援法
障害者支援法は正式には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」という名称の法律です。
障害者総合支援法は、健常者と障害者が分け隔てなく生活できるように、障害者への支援を定めた法律です。
この法律では「障害者」を以下のように定義されています。
第四条
この法律において「障害者」とは、身体障害者福祉法第四条に規定する身体障害者、知的障害者福祉法にいう知的障害者のうち十八歳以上である者及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第五条に規定する精神障害者(発達障害者支援法(平成十六年法律第百六十七号)第二条第二項に規定する発達障害者を含み、知的障害者福祉法にいう知的障害者を除く。以下「精神障害者」という。)のうち十八歳以上である者並びに治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者であって十八歳以上であるものをいう。
つまり以下の方々を「障害者」と定義されています。
- 18歳以上の身体障害者
- 18歳以上の知的障害者
- 18歳以上の精神障害者
- 18歳以上の障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者
身体障害者とは
障害者総合支援法の「身体障害者」とは身体障害者福祉法という法律で定義されています。
身体障害者福祉法
身体障害者福祉法とは、身体障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、身体障害者を援助したり必要に応じて保護したりして、身体障害者の福祉の増進を図ることを目的とした法律です。
身体障害者福祉法では「身体障害者」を以下のように定義しています。
(身体障害者) 第四条
この法律において、「身体障害者」とは、別表に掲げる身体上の障害がある十八歳以上の者であつて、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。
つまり、以下の別表に該当する身体上の障害がある18歳以上の方で身体障害者手帳の交付を受けた方が「身体障害者」となります。
身体障害者福祉法別表
一 次に掲げる視覚障害で、永続するもの
1 両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常がある者については、矯正視力について測ったものをいう。以下同じ。)がそれぞれ0.1以下のもの
2 一眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもの
3 両眼の視野がそれぞれ 10 度以内のもの
4 両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
二 次に掲げる聴覚又は平衡機能の障害で、永続するもの
1 両耳の聴力レベルがそれぞれ 70 デシベル以上のもの
2 一耳の聴力レベルが 90 デシベル以上、他耳の聴力レベルが 50 デシベル以上のもの
3 両耳による普通話声の最良の語音明瞭度が 50 パーセント以下のもの
4 平衡機能の著しい障害
三 次に掲げる音声機能、言語機能又はそしゃく機能の障害
1 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の喪失
2 音声機能、言語機能又はそしゃく機能の著しい障害で、永続するもの
四 次に掲げる肢体不自由
1 一上肢、一下肢又は体幹の機能の著しい障害で、永続するもの
2 一上肢のおや指を指骨間関節以上で欠くもの又はひとさし指を含めて一上肢の二指以上をそれぞれ第一指骨間関節以上で欠くもの
3 一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの
4 両下肢のすべての指を欠くもの
5 一上肢のおや指の機能の著しい障害又はひとさし指を含めて一上肢の三指以上の機能の著しい障害で、永続するもの
6 1から5までに掲げるもののほか、その程度が1から5までに掲げる障害の程度以上であると認められる障害
五 心臓、じん臓又は呼吸器の機能の障害その他政令で定める障害で、永続し、かつ、
日常生活が著しい制限を受ける程度であると認められるもの
知的障害者とは
知的障害に関しては「知的障害者福祉法」という法律がありますが、「知的障害者」の定義規定はありません。
知的障害者福祉法
知的障害者福祉法の目的は第1条で以下のように規定されています。
(この法律の目的) 第一条
この法律は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(平成十七年法律第百二十三号)と相まつて、知的障害者の自立と社会経済活動への参加を促進するため、知的障害者を援助するとともに必要な保護を行い、もつて知的障害者の福祉を図ることを目的とする。
精神障害者とは
障害者総合支援法の「精神障害者」とは精神保健及び精神障害者福祉に関する法律という法律で定義されています。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律は、以下のような目的の法律です。
- 精神障害者の医療及び保護を行う
- 精神障害者の社会復帰の促進及びその自立と社会経済活動への参加の促進のために必要な援助を行う。
- 精神障害の発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進に努める。
- 精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図る。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律では「精神障害者」を以下のように定義しています。
(定義)第五条
この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者をいう。
障害者総合支援法での「精神障害者」には、知的障害者福祉法にいう知的障害者は含まれません。
発達障害者支援法
発達障害者支援法では以下のような目的の法律です。
- 発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を明らかにする。
- 学校教育における発達障害者への支援、発達障害者の就労の支援、発達障害者支援センターの指定等について定める。
- 発達障害者の自立及び社会参加に資するようその生活全般にわたる支援を図る。
- 発達障害者の福祉の増進に寄与すること。
発達障害者支援法では「発達障害者」を以下のように定義しています。
(定義)第二条
この法律において「発達障害」とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう。2 この法律において「発達障害者」とは、発達障害を有するために日常生活又は社会生活に制限を受ける者をいい、「発達障害児」とは、発達障害者のうち十八歳未満のものをいう。
障害者総合支援法での「精神障害者」には、発達障害者支援法第二条第二項に規定する発達障害者を含みます。
障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者とは
障害者総合支援法第4条第1項にある「治療方法が確立していない疾病その他の特殊の疾病であって政令で定めるものによる障害の程度が厚生労働大臣が定める程度である者」は段階的に対象となる疾病が追加されています。
令和元年7⽉1⽇からの障害者総合⽀援法の対象疾病⼀覧(361疾病)